第11回春の方法論セミナー

和文誌の未来を切り拓く:査読プロセスの最適化と論文執筆の知恵

日時

2024年2月29日(木)13:00~17:00予定(質疑、休憩含む)

開催方法

対面+zoom中継

対面会場

大正大学(教室は確定次第掲載)
(〒170-0001 東京都豊島区西巣鴨3丁目20−1)

企画

日本社会心理学会学会活動委員会、編集委員会

HP(当日詳細資料、申し込みサイトなど)

https://sites.google.com/view/jssp2023nendoseminar/home

登壇者

司会:清水裕士(関西学院大学・『社会心理学研究』副編集委員長)

第一部:論文査読セミナー

大坪庸介(東京大学)
平井啓(大阪大学)

第二部:論文書き方セミナー

中島健一郎(広島大学)
三浦麻子(大阪大学)

第三部:『社会心理学研究』の取り組み

結城雅樹(北海道大学・編集担当常任理事)

企画趣旨

第一部:論文査読セミナー

概要:日本の学会が運営する学会誌は、いま共通の問題を抱えている。それは投稿数および掲載数の減少である。当学会の『社会心理学研究』も、投稿数は減る一方、採択率も下がってしまい、結果的に掲載される論文は、ついに1本だけの号もあった。

この背景には、査読ハードルが低い(とみなされている)海外のオープンジャーナルの存在と、その対比としての和文誌の査読時間の長さ、厳しさなどもあるのではないか。国際的なプレゼンスが求められる今、和文誌はどのような役割を持ち、またどのような「査読レベル」によって研究成果を発表していくべきなのだろうか。

本セミナーでは、和文誌の役割とともに、その査読のあり方について議論を行いたい。登壇者は、社会心理学研究の前編集委員長である東京大学の大坪庸介先生、そして学際領域における科学者間のコミュニケーションについて明るい大阪大学の平井啓先生にお願いし、これからの日本の心理学における「よりよい査読」についてご意見をいただく。

第1登壇者 大坪庸介先生(東京大学)(40分)
題目:『社会心理学研究』の編集プロセスについて

概要:『社会心理学研究』の編集プロセスには、編集委員を経験したことがないと知り得ないことがたくさんあります。例えば、担当論文の掲載可否を決めた後、主査が他の編集委員に審査プロセスについて報告していること。こうした手続きの中には、審査期間を長くしたり、厳しい審査を誘発する要因になっているものもあるかもしれません。編集プロセスの構造的な問題をみつけるには、それをオープンにすることが必要だと思います。そこで、『社会心理学研究』の編集プロセスについてご紹介します。

第2登壇者 平井啓先生(大阪大学)(40分)
題目:社会心理学研究における査読プロセスの最適化の方法

概要:社会心理学研究の査読プロセスにおいて、ジャーナルによって異なる「妥当性要求水準」を明確にすることが、投稿者、査読者双方にとってその負担を最適化する一つの方法であると考えている。そのためには、私は査読者となるときには、FINERやPECO/PICO等のフレームワークを活用してその論文のリサーチデザインを構造化して評価している。また、査読において、投稿者、査読者双方の負担を減らすもう一つの方法は、査読プロセスにおける編集委員会や主査の権限行使などの意思決定の最適化であると考えている。そこで上記の概念について解説しながら、投稿者と査読者双方にとって利益となりうる社会心理学研究の査読プロセスの最適化について議論をしたい。

質疑・討論(15分)

第二部:論文書き方セミナー

概要:査読のあり方を議論する上で、投稿される論文のクオリティの話をぬきにはできない。和文誌に投稿される論文の中にはときに「適切な指導を受けたもとで書かれたものなのか」と思わざるを得ないものがあるのも事実である。和文誌の掲載数を高めるためには、そもそもよい論文を投稿してもらうことが必要である。

一般に、論文の書き方は大学院生時代に指導教員とともに執筆するなかで習得されていくものと考えられているが、その指導方法はさまざまであり、また指導方針について議論されることもこれまでほとんどなかったように思われる。また、大学院を卒業してこれから研究論文を自分一人で書いていかなければならないキャリアの若い研究者にとっては、論文の書き方を改めて学ぶ場があることは意義があると思われる。

本セミナーでは、院生やキャリアの浅い研究者を論文投稿に向けてエンカレッジしたい。登壇者は、これまで留学生を含む院生たちの論文指導を行い、和文誌や国際誌への投稿をサポートしてきた経験をもつ広島大学の中島健一郎先生と大阪大学の三浦麻子先生にお願いし、論文執筆に際して知っておくと良い、あるいは知っておいてほしいことをお話しいただく。

第3登壇者 中島健一郎先生(広島大学)(40分)
題目:論文を書くときに、何を大切にしてきたか
   院生が論文を書き進めていくために、いつ、どのような声掛けをしてきたか

概要:今の所属先に着任してからの10年間、中島にとっての研究とは学生の研究活動を支えることでした。これは中島にとって必要な仕事ではありますが、大切にしたい時間でもあります。進路希望や考え方の異なる学生とかかわる中で、学生たちがどのようなときに論文執筆をためらうのか、どのような声掛けをすれば論文執筆を進んで行うようになるのかの見通しが持てるようになってきました。同時に、論文を書くときに何を大切にするかに対する自身の認識も変わってきました。これらの問いを題材に、中島が今考えていることを、自省を含めて紹介したいと思います。

第4登壇者 三浦麻子先生(大阪大学)(40分)
題目:論文の書き方・「書かせ」方―失敗を含む経験談

概要:気付けば研究者となって四半世紀が過ぎ、年齢だけは立派なシニアの仲間入りをしたことを自覚せざるを得ない昨今ですが、お陰様で(だいたい)毎日楽しく研究をして論文を書いています。ECR時代は「背中を見て学ぶ」しかなく暗中模索だったのが、あるきっかけで研究の楽しさに目覚め、学際を含む優れた共同研究者に恵まれ、また3大学で学生指導をしてきました。そんなこれまでの経験から学んだ/考えたことをお話しします。

第三部:『社会心理学研究』の取り組み(16:35~17:00)

登壇者 結城雅樹先生(北海道大学・日本社会心理学会編集担当常任理事)(20分)

前述の危機的状況に対応して、『社会心理学研究』は本年度から幅広い改革を実施している。これらの取り組みは、投稿数と掲載数の増加を目指すだけでなく、社会心理学と関連領域の更なる活性化を促進することを目的としている。本セミナーの締めとなるこの講演では、具体的な改革事例とその達成目標、そして今後の取り組みを検討中の事業等についてご紹介する。