第3回春の方法論セミナー

第3回春の方法論セミナー「統計的因果推論への招待」

日時

2016年3月16日(水)12:30開場 13:00~17:45

会場

上智大学四ツ谷キャンパス3号館521教室

参加費

無料(事前予約不要;会員以外の参加も可)

企画

日本社会心理学会新規事業委員会

講師とスケジュール・講演要旨

12:30
開場
13:00~13:05
挨拶+講師紹介
13:05~13:45(40分)
「因果と確率の哲学」
大塚淳(神戸大学人文学研究科准教授・科学哲学)
資料動画
13:45~14:05(20分)
「ぼくらが因果鉄道の旅に出る理由」
林岳彦(国立環境研究所環境リスク研究センター主任研究員・環境リスク学)
資料動画
(休憩)
14:20~16:20(120分)
「統計的因果効果の推定について」
星野崇宏(慶応義塾大学経済学部教授・統計学)
(休憩)
16:35~17:05(30分)
「因果探索:観察データから因果仮説を探索する」
清水昌平(大阪大学産業科学研究所准教授・統計学)
資料
17:05~17:45
質疑応答

大塚先生には、全体の導入として因果概念について科学哲学の観点から整理をしていただきます。具体的には、因果に対するヒュームの見解、反実仮想、因果グラフといった、統計的因果推論を理解するために必要な思想的背景を説明していただきながら、「因果推論と統計推論とは、そもそも世界と認識についての考え方(パラダイム)が根本的に異なっている」という、このフィールドを理解するための心構えを紹介していただきます。

林先生には、因果推論の全体的な見取り図を「ゆるふわ」に紹介していただきます。また環境科学系リスク評価の研究者の観点から、社会心理学におけるリスク研究への爆弾もゆるふわに投下していただく予定です。

星野先生には、こうした導入を踏まえた上で、実際の手法について紹介していただきます。具体的には、ルービンの因果モデルを出発点として、因果推定の観点から回帰分析や分散分析という我々が良く知るモデルを見直し、そして傾向スコアについて紹介していただきます。また心理系の研究における応用例を紹介していただくと共に、「因果推定には無作為サンプリングされた実験さえあれば良い」と信じる素朴実験至上主義者が気づかない「不都合な真実」についても言及していただきます。

最後に、清水先生には調査データのみから因果の方向性を推定するという驚くべき可能性を、先生が開発されたLiNGAMというモデルに基づいて紹介していただきます。

司会

竹澤正哲・清水裕士

プログラムアドバイザー

林岳彦

講師紹介・ セミナー詳細

会報に掲載した告知をご覧ください

概要

因果の特定。それは実証研究の最重要目標である。ランダムアサインメントされた実験をおこなえば因果を特定できること、調査データに対しては重回帰分析などを使って交絡要因を統制すること。社会心理学者ならこのくらいは誰もが知っている。だが、そこから先、我々は因果についてどれだけのことを知っているのだろうか。第3回春の方法論セミナーでは、「統計的因果推論への招待」と題し、統計的因果推論という広大なフィールドへの入り口を紹介する。

統計的因果推論とは

疫学や計量経済学など、実験を行うことができないにも関わらず因果を特定しなければならない分野は多い。統計的因果推論とは、そこから生まれた一群の分析手法である。「因果とは何か」に関する洗練された科学哲学的な議論を基礎とし、何を明らかにすれば因果が特定できるのか,因果を明らかにするとはどういうことなのかが緻密に議論される中で、様々な手法が生み出されてきた(例1、例2例3 )。ビッグデータが利用可能となるに連れて、統計的因果推論に関する関心はますます高まるばかりである。

実験だけで全ての目的を達成できるならば無用な知識かもしれない。だが調査データを扱う他領域の研究者と交流を持つためには、必要不可欠な教養となりつつある。また実験社会心理学者が思い描く素朴な「因果」観では捉えきれない、先進的な議論が行われており、因果の特定を目標とする実証研究者にとって、深く考えさせられる興味深い議論が多い。統計的因果推論のアイデアの一部は、構造方程式モデリング(共分散構造分析)として、社会心理学の中に浸透しているが、それも統計的因果推論のごく入り口に過ぎない。

セミナーの構成

統計的因果推論については、優れたテキストが数多く出版されているが(宮川, 2004; 星野, 2009; 森田,2014; 岩崎, 2015)内容が高度なため、自習するのは非常にハードルが高い。
本セミナーでは、この世界をあまねく紹介するのではなく、この広大な世界へ飛び込むための地図と入り口を提供することを目的とする。

まず導入として、因果概念を精密に整理し(大塚)、この分野の見取り図を紹介する(林)。続いて、統計的因果推論において最も洗練された手法である傾向スコア(propensity score)を紹介する(星野)。最後に、「調査データのみから因果の方向(AとBのどちらが原因で結果)を推定することすら可能な場合があるのだ」という驚異的な議論を紹介する(清水)。

本セミナーを通して、統計的因果推論というこの広大な森に踏み込むための第一歩を提供できれば幸いである。

なおより詳細な講師紹介について、ぜひとも会報における告知を参照いただきたい。